股関節の痛みについて
股関節は、骨盤と太ももの骨をつなぐ大きな関節で、立つ、歩く、しゃがむ、階段を上る、靴下をはくといった日常動作を支える大切な役割があります。関節そのものだけでなく、周囲の筋肉、腱、靱帯、関節唇などが協力して、体重を支えながらなめらかに動く仕組みになっています。そのため、加齢、体の使い方、スポーツ、発育の影響、外傷など、さまざまな原因で痛みや動かしにくさが起こります。股関節の痛みは、脚の付け根の痛みとして出ることが多い一方で、太ももの外側、おしり、膝のあたりに痛みを感じることもあります。
股関節の症状では、痛みの場所だけでなく、歩き始めの痛み、長く歩いたときの痛み、可動域の低下、足を開きにくい、しゃがみにくい、びっこを引くといった変化が大切です。特に、転倒後に体重をかけられない、急に強い痛みが出た、夜間痛が強い、症状が長く続く場合には、詳しい評価が必要です。当院では、痛みの部位や動きの制限、筋力、歩き方などを丁寧に確認し、必要に応じてレントゲン、超音波検査、MRIなどを行いながら、状態に合わせた治療をご提案します。
変形性股関節症について
変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減り、関節に変形が生じることで、痛みや動かしにくさが起こる病気です。股関節症の主な症状は、関節の痛みと機能障害で、初期には立ち上がりや歩き始めに脚の付け根に痛みを感じることが多く、進行すると持続痛や夜間痛がみられることもあります。靴下がはきにくい、足の爪が切りにくい、階段や車の乗り降りがつらいといった日常生活の不便につながることも少なくありません。治療は、お薬、リハビリ、生活指導などの保存療法が基本ですが、痛みや障害が強い場合には手術が検討されます。
臼蓋形成不全について
臼蓋形成不全は、股関節の受け皿である臼蓋が浅く、股関節を包み込む力が弱い状態です。小児期には症状が目立たないこともありますが、成長後は股関節への負担が大きくなり、将来的に変形性股関節症や関節唇損傷の背景になることがあります。日本整形外科学会では、股関節症の多くで発育性股関節形成不全や股関節の形成不全が背景にあると説明しています。症状としては、脚の付け根の痛み、疲れやすさ、不安定感などがみられることがあります。
股関節唇損傷・股関節インピンジメント(FAI)について
股関節唇損傷は、股関節の縁にある関節唇という組織が傷ついた状態で、脚の付け根の痛み、引っかかる感じ、クリック音、動かしたときの違和感などを起こします。背景としては、股関節インピンジメント(FAI)、臼蓋形成不全、スポーツ動作、外傷などが関係します。FAIは、股関節をつくる骨どうしが動作のたびにぶつかりやすい状態で、しゃがむ、ひねる、深く曲げる動きで鋭い痛みが出ることがあります。若い方やスポーツをする方の鼠径部痛の原因として比較的よくみられ、必要に応じてMRIなどで評価します。
大転子部痛症候群について
股関節の外側が痛い場合には、大転子部痛症候群が関係していることがあります。これは、いわゆる滑液包炎や腱の障害を含む概念で、股関節の横の骨の出っ張りあたりに痛みが出て、押さえると痛い、横向きで寝ると痛い、歩くと外側が痛むといった症状がみられます。痛みは太ももの外側に広がることもあります。股関節の中の病気とは痛む場所が少し違うため、診察で見分けることが大切です。治療は、お薬、生活動作の見直し、ストレッチや筋力訓練などが中心になります。
特発性大腿骨頭壊死症について
特発性大腿骨頭壊死症は、太ももの骨の先端にある大腿骨頭への血流が障害され、骨が傷んでしまう病気です。日本整形外科学会では、比較的急に始まる股関節痛と跛行が特徴で、変形性股関節症のように長い時間をかけて進む痛みとは少し経過が異なると説明しています。進行すると骨頭がつぶれ、股関節の変形や強い痛みにつながることがあります。比較的急な股関節痛や歩きにくさがある場合には、この病気も念頭に置く必要があります。
鼠径部痛症候群(グロインペイン)について
スポーツをしている方の股関節まわりの痛みでは、鼠径部痛症候群もよくみられます。これは、脚の付け根周辺に起こる慢性的な痛みの総称で、サッカーやランニング、方向転換の多い競技などで起こりやすいとされています。股関節だけでなく、腹筋、内転筋、腸腰筋、恥骨まわりなど複数の要素が関係することがあり、痛みの原因がひとつに限らないのが特徴です。運動時の痛みが続く場合には、フォームや柔軟性、筋力バランスも含めて評価することが大切です。
まとめ
股関節の痛みは、変形性股関節症のような加齢性の病気だけでなく、臼蓋形成不全、関節唇損傷、FAI、股関節外側の痛み、大腿骨頭壊死症、スポーツによる鼠径部痛など、原因がさまざまです。脚の付け根の痛みだけでなく、太ももの外側、おしり、膝の痛みとして感じることもあるため、痛む場所だけで自己判断するのは難しいことがあります。歩きにくい、可動域が狭い、長く続く、夜も痛い、転倒後に立てないといった場合には、早めに整形外科で評価を受けることが大切です。当院では、股関節の症状を丁寧に確認し、必要に応じた検査と、お一人おひとりの状態に合わせた治療をご提案します。